柄谷行人 メッセージ

パク・ユーハ氏の仕事

近年、日韓や日中間の緊張が急激に高まって来たのは、日本の政府があえてそれを作りだそうとしているからだ。それによって、国内における諸問題を打ち消すためである。そして、対外的な対立・緊張を利用して、日本をいつでも戦争できる体制に変えようと図っている。したがって、従軍慰安婦問題であれ領土問題であれ、それらを解決する気などさらさらない。

私がこのように日本の政府を批判するのは、日本の国民だからだ。外国に関しては、その国の国民が批判するだろうと思う。実際、韓国にもそのような人達が大勢いる。私はこうした相互的信頼にもとづいて活動してきたのである。とはいえ、それだけではすまないことがある。

その点で、私は、積極的に日本と韓国の間に立って発言しようとしてきたパク・ユーハ氏に注目している。彼女の仕事は、韓国では親日的と非難され、日本では反日的と非難されるだろう。そのことを最初から覚悟して、従軍慰安婦問題に長年取り組んできた氏に、私は深い敬意を抱いている。

2014年 8月 8日 柄谷行人